もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです


 貴族はもとより少女を手元に置くつもりがなく、より高額で売りさばいたのだ。奇跡の力を持つ〝聖女〟と呼び、セニルース王国の王女ラベーラのもとへ。

「ふうん、あなたが聖女なの?」

 ラベーラ王女が物珍しい動物を見る目で言ったのを、彼女は今でも覚えている。

 物心ついた頃から魔法の力を見世物にされ、やがて両親に売られた彼女には、己が何者であるかもわからなかった。

 答えられずにいた彼女に、ラベーラは咲き誇る花を思わせる笑みを浮かべたのだ。

「じゃあ、今日からあなたは私の親友ということにしましょう。ね?」