蹴り上げられたボールは、的とは90度違う方向に勢いを保ったまま飛んでいく。
そしてなんと、飛んで行った先には何かの長~い行列がある。このままでは間違いなく、並んでいる人に、もはや凶器と化したサッカーボールが当たってしまう。
「やばっ」
私は咄嗟に走り出した。
行列に並ぶ人たちはボールに気付く気配がない。
こんなに人が多い中で適当な方向に蹴り返したら、行列にいる人には当たらなくても誰か別の人に当たっちゃうかも。
なら──
私はどうにかボールが飛んできそうな位置に着き、タイミングを見計らって上に大きく蹴り上げた。
真上に高く上がったそのボールをジャンプしてキャッチする。
よしよし、ナイスキャッチ私。制服に着替えてなくて良かった。
「すみませーん!」
ボールを持つ私の元に、ボールを蹴った張本人とその友達、あとサッカー部の人が駆け寄ってきた。
サッカー部の人にボールを返すと、女子二人がペコリと深く頭を下げた。



