だってほら、柳沢くんがなっちゃんとペアになって、“実は両想いの執事とお嬢様”って設定で接客するのを想像しても、私は全然嫌な気持ちにならな……
……。
……。
嫌な、気持ちに……
「あれ……?」
私は無意識に胸の辺りを押さえた。
──待って、いったん落ち着こう。
今、執事の柳沢くんが、お嬢様のなっちゃんを優しくエスコートする場面を想像してみた。
そうしたら、胸の辺りがモヤっというか、ざわっという感じがした。以上。
え、何これ?
「あー、でも結局柳沢とはシフト被ってなかったわ」
「そっか……」
「ん?どうしたの葉澄?ぼーっとして」
なっちゃんに心配そうに顔をのぞき込まれて、思わず一歩後ずさる。
たった今私の中で起こった混乱を、なっちゃんには見透かされるような気がしたから。
だけど下がった先には、女子たちの輪をどうにか抜け出したらしい、混乱の原因のもう一人……というか主原因がいた。



