なっちゃんとそんな会話をしていたら、教室の後ろの方で「キャーッ‼」という女子たちの黄色い悲鳴が聞こえた。

悲鳴の中心地を見れば、燕尾服に身を包み、白い手袋をはめている途中の柳沢くんがいた。




「おうおう、あなたの彼氏大人気じゃないの葉澄サン」


「うん!」




私の見立ては間違っていなかったっぽい。

これは柳沢くん目当てのお客さんでごった返しそう。




「ていうかさ。なっちゃんがお嬢様で柳沢くんが執事、主従関係って設定で接客したら面白そうじゃない?」


「あー、なるほどね。柳沢とシフト被ってたらそれもありかも。……でもさ、それ葉澄的に嫌じゃないの?」


「え?何で?」


「自分の彼氏が他の女とペアになってるの、普通嫌でしょ」




た、確かに。

だめだなあ。本当に付き合ってるわけじゃないからそこまでの気持ちになれないんだもん。

ごめんね柳沢くん。私、付き合ってるフリ下手すぎるかも。