柳沢くんの家は、学校の最寄り駅から何駅か先にあった。

そこそこ立派な一軒家に家族と暮らしているけど、今日はその家族は外出中なのだそう。



「お邪魔しまーす」


「そこの階段上って廊下のつきあたり。飲み物持ってくから先行ってて」


「わかった。男の子の部屋入るの初めてだからちょっとドキドキするな」




言われた通りに行った先にあった、柳沢くんの部屋。

想像通りの、とてもシンプルな部屋だった。


柳沢くんの匂いがする気がする……と、ちょっと変態じみたことを考えそうになったとき、後ろから飲み物を持った部屋の主が入ってきた。




「机ちょっと小さいけど我慢して」


「うん」




所有者も言った通り、机はコップとテキスト二冊を置けばいっぱいになるような大きさ。

向かい合って座ると、距離がめちゃくちゃ近い。

静かになったら、心臓の音とか呼吸音とか、全部聞こえちゃいそう。