「違う……そんなことを言ったのは……」


「言ったのは？」


「……付き合ってる演技に深みを持たせるため、だから」




ボソボソとした声でそんな答えが返ってきて、私は目を瞬かせる。


へ、へえ。

何やら私の女の勘は、全くの見当違いだったらしい。

えっと、柳沢くんは恋人のフリを極めようとしてるのかな？案外真面目というか……。

始めたことはとことん突き詰めるタイプなのかも。




「ていうか、ハスはその……この偽装カップルをやめるってなっても、全く未練無さそうだね」


「え？うん。だって、私は秘密をバラされないよう見張りたいだけだもん。バラさないって誓ってくれるならいつだってやめるよ？」




本当に付き合って別れたわけじゃないから、別れたことにした後、友達として話すのも特に気まずくないし。

だから安心して！というつもりで言ったんだけど……。




「……あっそ」




柳沢くんの反応からは、機嫌の悪さがにじみ出ていた。

あ、あれ？私何か変なこと言った？