今までグイグイ私の手を引いていた柳沢くんが突然立ち止まった。
そのおかげで、柳沢くんの背中にドンっと思いっきり顔をぶつけてしまった。
「ハス」
「どうしたの……っ……ん」
名前を呼ばれて顔を上げた瞬間、口に何かを放り込まれた。
スーッと広がっていく清涼感に、口に入れられたものの正体は、今日会ってすぐに渡したハッカ味の飴だとわかった。
「話してスッキリするなら好きなだけ話せばいい。でもそんな顔するほど話すのが辛いんなら飴でも食べて黙ってれば?」
「ん……」
「てかハッカ味の飴って意味わかんないよね。飴なんて砂糖の塊なんだから甘くなきゃ価値ないでしょ。わざわざ辛くするとか最初に作った人は変人だったとしか思えないな」
全国のハッカ飴好きを敵に回しそうなことを言いながらも、柳沢くんは私があげたもう一つの飴を自分でも口に入れた。
……うわぁ、嫌そうな顔しながら食べるな。
柳沢くん、マシュマロ好きの甘党だもんね。
それも今日、初めて知ったよ。



