わあ、やっぱ怒ってる。
柳沢くんからしてみたら、カフェでゆっくりしてただけなのに突然知らない人に絡まれて、災難でしかないよね。
山内とのことは説明しておく義務がある気がして、私は手を引かれたままボソボソとしゃべりだした。
「あのね……山内が言ってたこと、全部本当なんだ」
柳沢くんは振り返らないし、足を止めないし、相づちを打つ気配すらない。
「あの頃は部活に夢中で、同級生の子たちみたいなおしゃれには興味なくて。動きやすさ優先だったから確かに見た目も男子っぽかったの。だからかな、男友達も結構いて、その中でも一番よくしゃべってたのが山内だったんだ」
どうでもいい冗談を言い合える仲で。
いつの間にか周りより特別な存在になっていた。
「それでね、好きになっちゃったって思い切って告白したら──ばっさりフラれちゃってさ。私のこと女子として見られる男なんていないんだって。まあ確かにあんなんじゃ女子扱いされないのも仕方なかったって思うけど……って痛っ」



