「クズ」を強調する柳沢くんの声は、今まで聞いた中で一番冷たかった。

顔は王子様スマイルのままなのが、恐怖感を倍増させている。




「人は変わる。そして必ずしも変わる前の状態が本性ってわけじゃない」


「ど、どういう意味だよ」


「良いんじゃない?一生わからなくて」




柳沢くんは、テーブルの端にあった伝票をちらりと確認して、数枚の千円札を置いた。




「お釣りはいらない。もう一秒だってこんな不快な店員がいる店にいたくないので。……行こう」




呆気にとられている私の手をつかんで、柳沢くんは無言で歩き出す。


もしかして……助けてくれたのかな。


私は、店を出た後も大股でずんずん歩き続ける柳沢くんの背中に向けて言った。




「ごめんね……」


「何が?あんたの元同級生があんまりにも不快だったから俺が勝手に出てきただけ。知り合いに会ったからって仕事中にあんなベラベラしゃべる奴、さっさとクビにしちゃえばいいのに。あれじゃいくら料理が美味しくても店の評価下がるだろ」