「って言ってもなあ、そもそも葉澄、どんな男がタイプなわけ?」


「うーん、好みか……まあやっぱり、優しい人、かな」


「いやいや、あたしが聞いてるのはそんな無難な回答じゃなくてさ」


「あっ、勇気を出して告白してきた女の子のことを悪く言わない人!これは絶対譲れない!」


「そんなの最低条件でしょ。あたしが聞いてるのはもっと具体的なところ。顔とかさ」


「顔……顔かぁ……」



うーん、難しい。

初恋の相手は普通にイケメンだったけど、顔が好みだったのかって聞かれたら微妙だしなぁ。


そんなことを考えていたとき。私の机の端に置いていたシャーペンに手が当たって、音を立てて落ちたかと思うと、そのままコロコロと転がっていった。

すると転がっていった先にいた誰かが拾いあげて、私の席まで来る。




「はい。落としたよ、香田さん」


「ありがとう柳沢(やなざわ)くん」



お礼を言う私に微笑みかけたのは、クラスメイトの柳沢奏多(かなた)くん。