結果的に黙ってしまった私に、岸井さんはイライラを募らせる。
「わかるでしょ?さっさと身を引けって言ってんの」
「それは……」
「あーそうだ良いこと思いついた。香田さんがちゃんと冷静になって正しい判断ができるよう、一人でじっくり考えられるようにしてあげる」
「え」
岸井さんはそう言ったかと思うと、何の前触れもなく私の両肩を力いっぱい押した。
突然だったので私はそのままよろけてしまい、とっさに受け身の体勢をとる。
その後の岸井さんたちの行動は素早かった。
私が背中から転んだのとほぼ同時に体育倉庫から出て扉を閉めて。
ガチャン、と鍵のかかる嫌な音がした。
「うふふ、まあ明日の朝になれば朝練に来た運動部にでも開けてもらえるんじゃない?」
扉の向こうからは、岸井さんの勝ち誇ったような笑い声が聞こえてくる。
「うそでしょ……」
ぱたぱたと走り去っていく足音に、私はしばらく呆然とするしかなかった。



