なっちゃんの心配が現実になったことに冷や汗を流す私に、岸井さんはまた一歩近づいてきた。




「ねえ香田さん。もっと静かな場所でゆっくり話しましょうか」




全力で遠慮します!と言いたいところだけど、言ったら火に油を注ぐだけだよね。

私が大人しくうなずくと、岸井さんの合図で一団は動き出した。

取り囲むようなフォーメーションから、私のことは絶対に逃がすまいという意志が伝わってくる。


促されるがままに連れて来られたのは、体育倉庫の中だった。



「今日はここに来る運動部もいないし、邪魔されずゆっくり話せるでしょ?」


「そ、そうデスネ」


「ところで香田さん。私のことは知ってる?」


「岸井さん、だよね。4組の」


「あらあら、知っててくれたのね」




まあ、知ったの今日だけど。




「じゃあ私が奏多くんのことを好きっていうのも知ってるんじゃない?それなのに何であなたが奏多くんと付き合ってるのかしら?」




奏多くんって……柳沢くんの下の名前か。

ええっとね、付き合ってる(フリをしてる)理由は、弱みを握り握られてるから、お互い監視するため(&柳沢くんの女避け)なんです!

なんて言うわけにもいかず。