そう言ってなっちゃんは、『シャレにならない女』について語り始めた。
4組の岸井さん。
ずいぶん前から柳沢くんが好きだと公言していて、同じように柳沢くんに恋する女子たちにはなかなかキツイ嫌がらせをしていたそうだ。
親がどこかの社長でお金持ちらしく、なかなかの数の取り巻きがいるのだとか。
「あたしの予想では、葉澄の靴箱に虫入れたのも岸井の取り巻きどもじゃないかと思うんだけど……。それがあんまり葉澄にダメージないから、もっと何か危険なことしてくるかも」
「えぇ……」
「大丈夫、ハスのことはちゃんと責任を持って俺が守る」
優しく私の手を握って、真剣な声で言う柳沢くん。
だけど私に向けられたその目は、「それぐらいあんた一人で対処できるでしょ」とでも言っている気がした。
いやまあね、確かに柳沢くんなんかに守ってもらわなくたって平気だと思うけど。
その危険人物岸井さんに目を付けられたかもしれないのが自分のせいだってことは、反省してくださいね?
……とまあこんな風になっちゃんが忠告してくれたのにもかかわらず。
その日の放課後、さっそく件の岸井さんに対面することとなった。



