完全無欠の王子様と名高い柳沢くんの秘密を知ってしまったあのとき。

偽装カップルなんてめちゃくちゃなことに協力させられるし、好きになることはまずないと思っていた。


だけど、そんな柳沢くんの色々な面を知るようになって。

お互いの過去に触れて。


自分でも気が付かないうちに、どうしようもなく彼に惹かれていた。




「私だって、柳沢くんのこと離してあげるつもりないからね!物理的に!」


「ははっ、物理的になんだ」




柳沢くんは顔を綻ばせて笑った。



猫をかぶるのは悪いことじゃない。

自分を取り繕って過ごすのだって、立派な処世術。

だけど、ずっとそれだと疲れるから。


柳沢くんがかぶった猫を外して、こうやって心から笑える相手でいたいな。

そしてできれば、そんな相手の中でも、私が一番特別な存在がいい。


……なんて思うのは、実は私もなかなか独占欲が強いのかも。



-fin-