あの色々やべぇ岸井まいに目を付けられてはかなわないと、柳沢くんの疑惑を口に出す人はすぐいなくなった。


そんなこんなで、無事に日常を取り戻したのだった。




「ねえ葉澄。柳沢と何かあった?」




──日常が戻り数日が経ったある日の放課後。なっちゃんにニヤニヤしながらそんなことを聞かれた。

以前柳沢くんと距離ができていたときにそんな感じの質問をされたことがあったので、私は驚いて首を振る。




「えっ?別に喧嘩してないよ?」


「違う違う。なーんか前より親密そうに見えるの」


「あっ、それは……」




気持ちを伝えて、偽装でもお試しでもない正真正銘の恋人同士になったからだ。

だけどそれをなっちゃんに言うわけにいかないし。


言い淀む私に、なっちゃんはさらにニヤニヤする。




「わかるわよ~。冬休みの間に一線越えたんでしょ」


「へ?」


「あーあ。ピュアで癒しのマイナスイオン系女子、とうとう柳沢に穢されてしまったか~。大人の階段上ってしまったか~」