ぽろぽろと涙が零れ落ちていく。



しばらく経って、その涙がそっと拭われた。



いつの間にか柳沢くんは私の前にいて、少し困ったような、だけど穏やかな笑みを浮かべていた。




「ありがとう」




ブランコのチェーンを掴む私の手を、柳沢くんの手が優しく包み込む。




「……またハスに救われたみたいだ」


「また?」


「付き合うフリを始めてすぐ、ハスが岸井まいやその取り巻きに嫌がらせされてたことがあったでしょ?」


「ああ、体育倉庫に閉じ込められた……」


「それ知ったとき、本当はすごく焦った。また俺のせいで他人を辛い目に遭わせたって。……だけど必死に探し回った末に見つけたとき、あんたは一言目に何て言ったか覚えてる?」


「『なかなか良い反射神経と筋力だね』。足場から落ちた私を受け止めてくれたから」


「そう。あんまりにもピンピンしてて驚いた。俺が来なかったとしても、倉庫の扉壊して脱出する気だったとか言ってて、一気に気が抜けたよね。……でも、その元気そうな姿に救われた」