「香田さん、数学のノート出してもらっていい?」

「あ、うん。遅れてごめんね」




授業ノートを集めていた係の男子に、私はお礼の意味を込めて微笑んだ。


だけどすぐに、「あ、やってしまった……」と思う。



私の近くにいたクラスメイト数人が、ざっと一気に私の方を見て、


そのうちの何人かが、マイナスイオン……癒し……なんて呟く。


最近、私が笑うたびにこうなんだよな。何とかならないかな……。




「今日も絶好調だね、葉澄(はすみ)!さすがはマイナスイオン出してる系女子!」



後ろからポンっと背中を叩かれた。


振り返ると後ろにいたのは、にやにやした笑みを浮かべた私の友達、なっちゃん。




「もうさ、名前からしてマイナスイオン出てそうだもんね。“葉”に“澄む”なんて」


「なっちゃんまで……マイナスイオンマイナスイオンって、人を滝みたいに言わないでよ」



初恋が散ったあの日から約一年。

髪を伸ばしたり、慣れない化粧を研究したり、ダイエットにも励んだりして、見事高校デビューを果たした私、香田(こうだ)葉澄(はすみ)