やがて茉莉花ちゃんは、「怖がらないでね」と前置きをしてから、私の前に左手を出した。
そして、長い袖をゆっくりめくった。
「これ……」
柳沢くんと久しぶりに再会したとき。私に柳沢くんの話をしていたとき。
思い返せば、茉莉花ちゃんは何度も左手首を気にするようにぎゅっと押さえていた。
「わたし、中一のとき、本気で死のうとしたんだ」
白くて華奢な手首には、似つかわしくない深く大きな傷跡が無数に付いていた。
「結構本気で危なかったらしいの。親が救急車呼んですぐ病院に運ばれたから助かったけど。学校にも噂はすぐ広まってね、転校しちゃった」
「何でそんなこと……」
「いじめが辛くて。クラスの一番派手な男子が中心になって、何人もにいじめられた。服脱がされて色々触られたり、結構容赦なかった。……そのいじめの原因が、わたしより前にいじめられてたかなくんを庇ったことだったの」



