私は中学では空手部に所属していた。
それも、そんじょそこらの腕前じゃない。
一年の時から全国大会に毎年出場し、優勝の経験もある。
めちゃくちゃ強いのだ。
あの日、高校では可愛くなって恋愛してやるという決心をした私は、女子力を磨くと共に得意の空手も封印した。
まず私が空手をしていたことを知る人がいなくなるよう、同じ中学の人がいない遠くの高校をわざわざ選んだ。
もちろん界隈では名が知られていることも考慮して、空手部がないかどうかも確認した。
入学後も、体育の授業では本気を出さないようにしてるし、重い荷物を運ぶよう頼まれたときは、わざと他の人にも助けを求めたりしている。
ぱっと周囲を見た感じ、私の通う桜崎高校の制服を着た人はいなかったし、知り合いには見られていなかったと信じたいな。
強いことは、せっかく苦労して隠してきたんだ。これからだって絶対に知られたくない。
……なんていう願いは、翌日音をたてて崩れ落ちることになった。



