最初は見間違いだろうと思った。

二人のことを考えすぎたから、ちょっと雰囲気の似ている人たちを見間違えたんだ。


だけど、何回まばたきしても、何回目をこすっても、その二人は柳沢くんと茉莉花ちゃんにしか見えなくて。

店の中に入って行った二人を見て、私は無意識にそれを追いかけていた。


店内はかなり込み合っていて、二人は私に気付きそうにない。

私は小さなポテトだけ買って、二人の座ったボックス席の隣の席を確保する。




「本当に会ってくれると思わなかったよ、かなくん」




意識を隣の席に集中させると、茉莉花ちゃんのそんな声が聞こえてきた。




「……俺がマリカに逆らえないこと、わかってたでしょ」


「うん、そうかもね」


「マリカのことはしょっちゅう夢に見たよ。……そのたび、罪悪感で押しつぶされそうになった。最近はようやく見なくなったと思ってたけど、まさか再会するとは」




感情の読めない声は、やっぱり間違いなく柳沢くんのもので。


『予定がある』っていうのは、茉莉花ちゃんと会うことだったんだ。