こんな可愛い子を魔の手から守ることができて、良かった良かった。


そうやってしばらくぼうっと見惚れてしまってから、はっとした。




「あ、いえ!何もされなくて良かったです!じゃあ私はこれで!」



私は早口で言って、手で半分顔を隠しながらそそくさとその場を離れる。

後ろで女の子が「え、あの、待って……」と呼び止めたそうにしていたけど、構っている場合ではない。




駅前というたくさんの人がいるところで、あんなことをしてしまった。気を付けてたのに、無意識に体が動いてしまった。

どうかどうか、知り合いに見られていませんように。



──一年前、私のことを振った男はこう言った。

『はははっ、冗談キツイって。香田のこと、女子として見れる男とかいねーだろ……』


これにはもちろん、香田葉澄は髪がぼさぼさで容姿に気遣わない“女子力が皆無”であるという意味もある。

だけど、あの人が言いたかったのはどちらかといえばこっちの意味合いが強かったはずだ。




香田葉澄みたいな、ゴリラ並みに強い奴、女子として見られる男なんていない。