空手のことは周りに秘密にしておいてもらえませんか……と言えば、高森くんは二つ返事で了承した。

ここぞとばかりに脅してくる柳沢くんとは違う。




「でも……もし、奏多が知るよりも先に僕が香田さんに話しかけていたら、僕が奏多の立場だった可能性もあったんでしょうか」


「え?私が高森くんと偽装カップルするってこと?」




質問の意図がわからなかったけど、とりあえず考えてみる。

うーん、それは……




「きっとないと思うよ。だって高森くんは、人の秘密を知ったからそれで脅そうなんて絶対考えないじゃん」


「まあ、そうですね。……あ、ジュースありがとうございました」




高森くんは苦笑いして、オレンジジュースのパックを畳んだ。


茉莉花ちゃんのことについて聞くという目的を達成したのでもう帰るつもりだった私は、駅まで一緒に行こうかと誘ったけど、高森くんは残って勉強をしていくからと丁寧にそれを断った。



……頭良くなるためには、やっぱり勉強しないとダメか。