猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め




それを思い出して、頭の片隅に一つの不安要素が浮かびかけた。

だけどその不安要素が何なのかはっきりする前に、柳沢くんに抱きしめられたままということに意識が向いてしまった。




「柳沢くん、そろそろ離れてはもらえませんか……」


「だめ。この数日間どんだけ落ち込んでたと思ってるわけ?」


「うっ、それはごめんなさい」


「ていうかさ。お試しとはいえとりあえず今から一カ月付き合うわけでしょ?これぐらいのこと付き合ってたら普通にすると思うけど?」


「そか……。が、頑張る」




頑張る。何を頑張るのか自分でもよくわからないけど。


それにしてもこんなにくっついてたら、汗臭かったりしないかな?

うぅ、不安になってきた。

何か意識を逸らせる物は……。あ、そうだ!




「……あの、お詫びの印にと思って、デパートで高級マシュマロ買ってきたんだけど、いる?」


「……いる」




私の問いかけに柳沢くんは渋々答えながら、ようやく腕の力を緩めた。