「つまり、俺はまだフラれてなかったってこと?……てっきり思いっきり拒否されたんだと思った」
「うん、……あそこで逃げたら、普通そう思うよね。自分勝手で本当にごめん」
「良かった。まだ可能性あるんだ」
柳沢くんはふっと息を吐いたかと思うと……私のことを抱きしめた。
「わっ、や、柳沢くん⁉」
「一カ月だね。その後また、ちゃんとした答えが聞けるってこと?」
「そ、そのつもり。……もちろん、その間に柳沢くんの私に対する気持ちが無くなったとしても、正直に言ってくれて良いからね」
「それはありえない」
やけにきっぱりと言い放たれた。
「俺にとってハスは本当に特別なんだ。誰かに自分のことを好きになってもらいたいと思ったのなんて、初めてなんだよ……」
そういえば、柳沢くんは今までずっと誰かに好きになられることを嫌がっていた。
告白してきた本人の前では優しく振る舞えても、一人になったとたんもらったラブレターを破り捨てずにいられないぐらいに。



