「ねえ、なっちゃん。おすすめの少女漫画を貸してほしいの」




文化祭が終わってから五日が経つ。

片付けが済んだことで、すっかりイベントの浮かれた余韻も消えてしまった。


この日珍しくなっちゃんの家に遊びに来ていた私は、部屋にずらっと並ぶ少女漫画たちを見てそんなことを頼んだ。




「葉澄、漫画なんて全然興味なかったじゃない」


「うん……ちょっと気になって」


「柳沢と別れたから、現実からフィクションの恋にシフトチェンジするつもり?」


「あ、いや……別れてない。きっと……うん」




あの時以来、柳沢くんとはまだ一言も話していない。

前にも、私たちが「もうすぐ別れそう」という噂がたったことがあったけど、今もたぶんそう。




「ま、そういうあたしも文化祭の日に元カレと別れたんだけどね。コスプレしてるあたしのこと知らない女と間違えて鼻の下伸ばしてやがんの。サイテー」