周囲の人へ向け、クラスの宣伝をしつつ、先ほどの害虫発言はキャラづくりの一環だとアピール。
さすが柳沢くん。抜かりない。
「楽しそう、行ってみよー!」といった声がちらほらと聞こえ、この辺りは再び閑散としてきた。
そんな中で、私は柳沢くんにぐいっと手を引かれ、すぐそこの教室の中に連れ込まれる。
その教室は、出し物に使わない机や椅子を文化祭の間保管しておくための部屋。さらに言えば、偽装カップルの約束をしたあの空き教室でもあった。
「……ねえ、何で空手の服じゃなくなってるわけ?まさか当番終わってからずっと?」
そう聞いてくる柳沢くんの声があまりに不機嫌だったので驚く。
「え?着替えたのはついさっきだけど……道着にケチャップこぼしちゃったから」
「あっそう。……ったく、俺が何のために空手家のコスプレ選んだと思ってんだ」
「……嫌がらせ?」
「違う。ナンパ防止。強そうな見た目してたら変な男から声かけられにくくなると思ったんだよ」



