男はニヤついた表情を引っ込めて、私の手を振り払うように離す。
「いーよいーよ冷めたからもう行きなよ。他の女の子探すから」
何それ!文化祭を楽しんでる他の女の子たちにもこんなことしようっていうこと⁉
許せない。文化祭は出逢いの場じゃない。健全に文化的行事を楽しむ場だ‼
口を開きかけた私を、柳沢くんはさりげなく制止した。
「お客様、文化祭に参加していらっしゃるお嬢様方に不埒な真似をなさるのはどうかおやめください」
コスプレキャラの執事になりきって、丁寧な言葉。
男も一瞬たじろいだような顔をする。
「なっ、……誰に声かけようがそんなのこっちの自由だ!」
「ですが、こちらも教師から言われていますので、それなりの対応をしなければなりません」
柳沢くんはそう言って、すっとスマホを取り出した。
「先ほどの様子を撮影しておりますので、これを教師に証拠として提出し、注意喚起をさせて頂きますね」
「なっ……」



