それを聞いて思い出した。

いつもの取り巻きの皆さんは、今日のために彼氏をつくって、岸井さんと一緒に回るという人はいなかった。だから岸井さんは今一人でいるんだ。

そんな薄い関係を繋ぐために、きっと彼女なりに必死だったんだ。




「もちろん奏多くんへの気持ちは本物だったし、恋敵のあなたのことが大嫌いなのも本当だけど」


「きっしーさん。私と友達になろう」


「……何で今の流れでそうなるのよ。あなたのことは嫌いって言ったでしょ」


「私はきっしーさんのこと嫌いじゃないよ」




岸井さんは大きく目を見開いて、何度か口をパクパクさせた。

それから少し顔を赤くして、顔を背ける。




「断るわ」


「えー……」


「でも……もうしょうがないから“きっしー”呼びは許してあげるわ、葉澄」




何だこのツンデレ美女。すごい可愛いな。


自分の恋路の邪魔をする人に容赦ない「シャレにならない女」岸井まい。

そんな彼女の裏の顔を見てしまい、不覚にもちょっとキュンとしてしまったのであった。