行列の中に取り巻きの皆さんが見当たらなかったので聞いてみれば、機嫌の悪さ全開でそう返された。

……取り巻きの皆さん、意外と忠誠心薄いんだな。




「ええと、それでこれは何の行列?」


「これは……」




岸井さんは答えようとしたのに、何を思ったのか無理やり私の手を引いて行列に引き入れた。




「ちょうどいいわ。あなたも入りなさい」


「え⁉いや、途中で列に乱入したら後ろの人に迷惑が……」


「私と一緒に入れば後ろの人たちの順番が遅くなることはないわ」


「入るって、だからこれはいったい何の列……」




ここで私は、ようやく行列の先頭に目をやった。

列は一階の教室まで繋がっている。手作り感たっぷりの大きな看板に書かれていたのは……




『血と人形の館』




要するにお化け屋敷だ。




「3年生全10クラスのうち、3クラスが合同で作った本格派お化け屋敷らしいわ。とある遊園地支配人の子どもがいるらしくて、コネを使ってプロに監修してもらったそうよ」



「わぁ……本気度が違う……」