その中でも、ちょうどボールの当たる危険性があった位置にいた人と目があった。
さっきの子に負けず劣らずの悪役顔美女。
ただし、こちらは知っている顔だった。
「あの、何かありがと……ってあなた、香田葉澄……!」
一瞬気が付かなかったようでお礼を言いかけたその人は、すぐに顔をしかめた。
えっと待ってね、名前が思い出せない。えっと……あ、そうだ。
「きっしーさん!」
「あなたに“きっしー”呼びされる筋合いはないわ!」
4組の岸井さん。
なっちゃんいわく、柳沢くんが好きだと公言している、いつも取り巻きたちに囲まれたシャレにならない奴。
実際、私も前に体育倉庫に閉じ込められたし。
「岸井まい、よ。ちゃんと覚えておきなさい」
「え……ごめんなさい」
ん、何で怒られてるんだろう。
「あれ?きっしーまいさんは、今日は一人?」
「微妙に混ざってるわよ……まあいいわ。そう、一人よ。文化祭一緒に回るためだけに彼氏つくったにわかリア充共に裏切られたからね。悪い?」



