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「そろそろ帰ろっかぁ」



とうとうその言葉を使わなくちゃいけない時刻がやって来て,私は流雨くんを振り返る。

流雨くんは今日何度も聞いたように「うん」と返した。

2人で出入口に向かう。

そこであれ? と私は足を止めた。



「どうかした?」



そう言う流雨くんに構わず,私は尋ねる。



「流雨くんって,つづばしだけど,ぎりぎりだよね。ここで迎え待ってるか歩いて帰った方が早いんじゃないの?」



私が言うと,流雨くんはツ…と動きを止めて,微妙な表情を浮かべた。

あれ,もしかして。



「そう,だけど。折角だから,電車で帰る」



気づいてなかった訳じゃない?