ほどけるいと。

子供が,ここに届くくらいの声で笑ってくれて,助かった。

と,俺は思う。

何か答えなきゃ,と思って口を開いたものの,大したことを言えそうには無かった。

俺は



『行ったこと無かったから丁度よくて』



そう言おうと思ってた。

だけど嘘をつくのは気が引けたから,助かった。

本当はただ。

琴音さんだから。

琴音さんだから誘いたいと思った。

琴音さんだから安心して誘えた。

ただ,それだけ。

だけどそんなこと言っても困らせるだけだし,抽象的すぎて難しいと思った。

俺にはそれ以上上手く表現できない。

元の席に戻ると,楽しそうな琴音さんが先にいて。



「あっち!」



と言った。

そして



「あっちに面白そうなお店があるよ!」



と,俺はまた琴音さんの言うお店に向かった。