「きょ,今日はもう,だめ…!」



絞り出すようにそう言うと,ぱっと離れる。

え…だめなの?

驚く俺の目に,真っ赤な琴音。

唇を噛んで俯いた琴音は,ぱっと走り出す。



「ちょっ」



と待って。

俺に応えるように,数歩先で琴音は止まった。



「かえろっ」



振り返った血色のいい琴音は,最強に可愛かった。

息を飲んだ俺は,小さくかぶりを振る。



「うん」



そしてまた,手を繋いだ。


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