ほどけるいと。

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小動物みたいにぱたぱたと,控えめに走り去っていく音がする。

その肩が震えたのも,耳が赤かったことにも気づいたのは多分俺だけで。

なんでか考える前に,何となくそわそわした。

首ごと琴音さんを追っていたらしい俺は,もうなにもないドアの向こうをぼうっと見ている。



「流雨? どしたー」

「や,なにも」



卯田に問われて,意識を戻す。



「そーいや最近多いよなー」

「やまと?」



多いって,なに。



「どっか,ぼーっと見てること」

「あーね。確かに」



同意した卯田が,何かを思い出すようにぽっと口を開く。



「でも前聞いたときは…」



その言葉で,俺はいつかのやり取りを唐突に思い出した。