私はさっと身を隠すように,近くの壁に身を寄せた。

どうしようか。

隠れて聞き耳を立てるわけにもいかない。

出来るだけ聞かないように努めて,タイミングを図ろう。

それで,終わらなそうなら…

由芽には悪いけど,少し他の場所で待とう。

困っている頭を抑えて,私はほっと短く息を吐いた。

卯田め。

私は困り果てて,聞こえてきた声の主を呪う。



「あ~? なんだよ急に」

「いや気になっただけ。そうゆうのあるのかなって。俺ないから」

「だろうな」「惚気かよ」



容赦ない突っ込みが入って,私は思わず笑いそうになる。

クラスにいたらしい彼女へ卯田は,知ってみるとひどい入れ込みようなのだ。