「そう」



言いながら思う。

琴音さんと同じ市内なのは,正直知ってた。

自己紹介の時,同じ市内なのは珍しいと覚えていたから。



「じゃあ,帰ろっか…!」



琴音さんの言葉を合図に,俺達は教室を後にした。

あの人知ってる? ⚪部だったんだ。あそこいいよね。

同じ市内で,少しだけ話題が広がる。

その頃にはもう,いくらか会話がスムーズになって,琴音さんもよく笑うようになった。

やっぱり気を使わせていたのかもしれない。

それから,ぴったり電車が来て。



「もうバイバイだね」



と降りた駅で琴音さんが笑った。

いかにも満足げな笑みで。



「私もお迎え頼んだから,もう来てるの。勉強教えてくれてありがとう! あと…シャーペンも」