真鈴は琴音が好きだけど,里桜は分からない。

俺は里桜が泣いてる理由,真鈴と違って分からなかったから。



「里桜,自販機でジュースでも買ってくれば? 里美も行くだろ?」



里桜の機嫌を取ってこい。

そんな意図が丸見えだ。

それも言い換えれば気遣いと名前をつけられて,やっぱり敵わないと思う。



「里美…行く?」


ぺたんと座り込んでいる里桜が俺に上目で尋ねて,俺は即決した。



「うん,行こ。それくらい奢る」

「いいの? でもこの前もそう言って…」

「ほら,いくよ。里桜。1番近いとこでいいの?」

「うん…」



泣き虫だ泣き虫だと言っても,里桜が俺達以外の場所で泣いたことなんてない。

今日ほどがっつり泣いたのも久しぶりだ。

分かってあげられたらいいのに。

俺は里桜を連れて,部屋を出た。



「ばっかじゃねぇの,あいつら」



そんな真鈴の呟きを,聞き逃して。