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子供相手でも,琴音は譲らない。

言外にそう込めてやっても,真鈴は生意気にも鼻で笑って,去っていった。

琴音はのほほんと笑いながら,座っていた場所に置きっぱのリュックを背負う。



「保育士,だっけ」

「ん?」

「将来の夢」

「将来の夢っていうか」



琴音がんーと頬をかいて,俺はまだ迷ってるのかなと思った。



「このまま行けば,そう,かな。真鈴と里美と里桜。今日も楽しかったし」



そう空を見上げた琴音はいくつも大人で,ちゃんと先を見ていた。

細められた瞳に,慈愛を感じる。



「本当に,ありがとう! 流雨とじゃなきゃ,来られなかった!」



本当に一瞬だけ,琴音が俺に抱きついて。

俺は驚くだけで,返せなくて。

それくらい唐突で,一瞬で。

俺もしたくなったけど,なんとなくやめた。



「前もって言ってあったけど…今日は遠くに外食みたいだから。ここで」

「うん」

「こんな中途半端な場所でばいばいなんて初めてだけど…悪くないね,満足だったから」

「ふっ…うん」

「またね」

「また」



お互い手を振って,俺は駅へ。

そして琴音は家族との待ち合わせ場所へと向かった。