ほどけるいと。

静かで,使われてない空き教室。

そこに2人で入って,私は近くのイスに座る。



「そう言えばさ~ここは良いけど,英語んとき一回だけ行った教室,入り口ぼこっとしてて転けそうにならん?」

「確かになる…けど。俺の話,忘れてない?」

「あ。…だって怒られるのやだもん。日誌だし忘れたから? この前関係ないノート提出しちゃったから? あーあ」

「それは知らないよ。もっと個人的な話。こんなとこまで連れてこられて,まだ気付いてないんだ」



ーほんと,鈍感。



そこいらを流れる風みたいに,自然で静かな声。

私はそれを拾えずに,チラリと室長をみた。



「室長?」



室長の纏う空気が,いつもよりかたい。