「んー……夏といえば海かなっていうのと」
「いうのと?」
「水着姿が見たかったから?」
「み……」
すごい、ハッキリ言ったなあ……!
何も言えないでいると、ふたりの間に妙な間が落ちて、綺麗な瞳がすいーっと逸らされた。
「ごめん、キモいこと言った」
口元を手で覆って小さくそう言った阿久津くんに、首を振る。
でも何て応えたらいいのかは分からなくて俯いていると、「待って」と焦ったような声が降ってきた。
「今の嘘。やり直しさせて。撤回したい」
「嘘?」
「いや、嘘では無い。けど……変に誤魔化そうとしたから、余計ワケわかんないことになった」
頭を抱える阿久津くんに、そんなに気にしなくてもいいのにな、と思って顔を覗き込もうとする。同時に、阿久津くんが視線を上げた。
「実は、さ」
「は、はい」
至近距離で目が合う。
その近さに、ドキドキしすぎてつい腰が引けてしまっていると、長い睫毛が頬に影を作った。
「……誕生日、なんですよね」
「え?」
「今日」
言われた言葉をすぐには処理できなくて、ぽかんとしてしまう。
誕生日……? 今日……?
「えっ、誰……の?」
「俺」
おれ……オレ……俺!?
「うそ!」
阿久津くんの誕生日!?
驚くけど、でも確かに阿久津くんの誕生日がいつかなんて、知らない。

