でも、想像していた温もりは来ず、代わりに届いたのは、どこか苦しそうな声だった。 戸惑いながら目を開けるも、綺麗な瞳は前髪に隠され、更に横を向くように顔を背けられているせいで、その表情は窺えない。 「怖がらせて、ごめん」 最後に、ほんの少し寂しそうな顔で、阿久津くんは私の頭を撫でた。 怖がっていたわけじゃ無い。 そう言いたくて、だけど隙を逃してしまって。 「そろそろ帰るよな。送るよ」 こちらに背を向けながらそう言った彼に、ただ頷くことしかできなかった。