「いやもうアイツのことは忘れて。存在しないものとして扱ってくれていいから」
「ええ……」
ちょっと話題に出しただけなのにこの反応。
やっぱり……と、教室での阿久津くんの態度を思い出して少し落ち込む。
「……怒ってる?」
「え?」
「今日、榊原くんと約束があったんだよね。私が邪魔しちゃったから……」
「いやいや、邪魔してたのはあいつの方でしょ。それになんで、俺が山本に怒るの」
きゅ、と車輪が止まる。
立ち止まって、柳眉を顰めながら不思議そうに私を見下ろしていた。
「教室であった時、少し怒ってたみたいだったから……違った?」
こう、眉間に皺が、と自分の眉間を指してみる。
すると阿久津くんは目を丸くして、そして口元を手の甲で隠しながら、そっぽを向いた。
「それは、山本にじゃなくて……」

