自然と視線が落ちてしまい、自分と彼の上履きを見続けていると、ふと彼の爪先がこちらを向いたのが分かった。
それに釣られるように顔を上げれば、視界にこちらへと両腕を伸ばす、唇を固く引き結んだ阿久津くんの姿が広がり──、
「ごめん」
そのまま、すっぽりと包み込まれるように抱きしめられた。
「……えっ!」
自分の拙さに落ち込んでいた気持ちが、すぽーんと吹っ飛んでしまう。彼の肩に顔を埋めるような姿勢になっているせいで、視界は真っ暗だ。
人が居ないとはいえ、こんな、廊下の真ん中でなんて大胆な事を……!
恥ずかしさに身じろげば、窘めるように腰に回った腕に力が込められてしまった。
「大丈夫。誰か来たら、ちゃんと離すから」
「うう……」
「はは、唸ってる。いーよ、突き飛ばしても」
そういう問題じゃない気が……と思いながらも、ここで嫌がるのは違う気がして押し黙る。

