咳払いをした阿久津くんが、どこか逡巡するように口元に手を当てたまま私を見る。
すると「じゃあ、はい」と阿久津くんが両腕を広げた。
「山本があっためて」
「え!?」
「大丈夫。俺もう濡れてはないから」
いや、そういう問題では……。
だってそれって、つまり、その腕に飛び込め、ということで……。
そんなの無理では!? とパニックになる私に、阿久津くんは胡座をかいた膝をパシンと景気よく叩いた。
「ここ座っていいから」
「そ、それは……」
そんな、絶対重いし、恥ずかしいし、それならカーディガンを脱いで掛けてあげた方が絶対いいのでは……!
ぐるぐると悩んでいると、阿久津くんの眉がどこか幼く、悲しげに下がっていく。
「……嫌?」
阿久津くんの、こういうところがズルいなあと思う。
嫌か嫌じゃないかで訊かれたら、それはもう、嫌ではない、としか答えられないのだ。

