しっし。と手で追い払う阿久津くん。
それからもしばらく問答は続いて、でもようやく決着がついたらしい。阿久津くん以外の子たちが帰り支度を始めて、その後ろを手ぶらの阿久津くんがついていく。
私はその様子を横目で眺めながら、反対側のドアから出て中庭に向かって歩き始めた。
きっと阿久津くんが来るまではもう少し時間がかかるだろうから、先に準備しておこう。そう思って。
「あれ、山本?」
なんとなく窓の外を見ながら廊下を歩いていたところで、ふと呼び止められて肩が跳ねる。
目を丸くしながら顔を前に向けると、反対側から歩いてくるのはジャージ姿の鈴原くんだった。
「まだ帰らんの?」
パッと表情を明るくさせながら近づいてくる鈴原くんに、つい一歩後退ってしまう。過剰に反応するのは申し訳ないと思いながら、どうにも気まずくて。
「あ……委員会の仕事があって」
「委員会……ごめん、なんの委員だっけ」
逡巡して、でも思い出せなかったのだろう。眉を下げながらすまなそうに尋ねてくる律儀さに小さく笑った。

