「えっと……俺?」
しん……と降りた沈黙を薙ぎ払ったのは鈴原くんで、不思議そうに小首を傾げる鈴原くんに、阿久津くんは綺麗な笑顔を崩さない。
「君以外に誰が居るの? 鈴原理久くん」
「フルネーム……」
「おいおい結、どしたんお前」
私たちよりも一足先に硬直状態から解除された榊原くんが、苦笑いしながら阿久津くんの肩を掴む。そんな榊原くんを、阿久津くんは睨みつけながら振り向いた。
「は? クラスメイトが困ってたら手を差し伸べるのが義務だろ」
「まじでどうした?」
困惑する榊原くんからフン、と顔を背けて、今度は鋭い視線のまま鈴原くんを見下ろす。
「で、どうすんの。理科室まで教科書もノートも持って行ってやるし、階段では松葉杖も持ってやるよ。他に必要なことがあればコイツを使ってでもやってやる」
親指で勢いよく指した先は榊原くんである。
鈴原くんはやや混乱した様子で阿久津くんと榊原くんを交互に見た。

