「山本」
ふわり、鈴原くんは柔らかく微笑んだ。
「部活終わり?」
ジャージ姿の鈴原くんにそう訊ねると、ああうん、と少しだけ歯切れの悪い返事が返ってくる。
「山本は? 珍しいな、この時間まで居るの」
「図書室に用事があって」
「もう用事は終わり?」
「うん」
「そっか」
おつかれ、と労いの言葉をかけてくれる間も、鈴原くんは動かない。……やっぱり、変だ。
「鈴原くんはまだ帰らないの?」
「あー……うん、もうちょっとしたら帰るわ」
何かを誤魔化すように笑った鈴原くんを、じっと見つめる。
鈴原くんも、そんな私に視線を合わせて……先に逸らしたのは、鈴原くんだった。
「なんか……責められてる? 俺」
「えっ、せ、責めては無いよ! ただ、何かあったんじゃないかなと思っただけで……」
違う? と首を傾げると、あー、と鈴原くんは逡巡したあとで、脱力したように机に伏した。
そして、ちらりと窺うように、チョコレート色の瞳が私を見上げる。
「いや、実は……部活で、足を捻っちゃって」
「え!?」
「早退したはいいんだけど、思ったより痛みが増してさ……ちょっと様子見してから帰ろうかなと思ってたんだよ」
ダサいから、言いたくなかったんだけど。なんて鈴原くんは言うけど。

