それで、そろそろ帰ろうかと教室に荷物を取りに来たのだけど、中に誰かいるなあと思ったら、鈴原くんだったのだ。
しかも、他には誰もいない。このままだと二人きりになってしまう。そう思って、思わず足を止めた。
それから、こちらに気づく様子のない彼のことを、じーっと盗み見ているわけなのだけど……。
(どうしようかな)
なんだか、鈴原くんのことを避けてるみたいで申し訳ない。彼は何もしてないのに。
でも、阿久津くんの請うような表情や、里香ちゃんの言葉が思い出されて、足を踏み出すのは躊躇われた。
……うん。やっぱり、もう少し図書室で時間を潰してから、また来ようかな。
そう思って、踵を返そうとする。でも。
「……?」
ふと、鈴原くんの姿に違和感を覚えて、逸らしかけた目をまた彼に向けた。
鈴原くんは何をするでもなく、ぼんやりしながら席に座っていて、時折、何かを堪えるように眉を顰めている。
いつも明るくて、ハキハキ、テキパキしている鈴原くんにしては、珍しい様子だった。
「鈴原くん」
声をかけると、丸まった瞳が勢いよく振り向く。
やっぱり放っておけなくて、声をかけてしまった。

