「ありがとう。今度なにかお返しするね」
そうお礼を言うと、別にいいのに、と鈴原くんは微笑んだ。
鈴原くんは、夏の朝みたいに爽やかな男の子だ。
サッカー部のエースだという彼は、阿久津くんとはまた違った形で人を惹きつける。
特に同じ運動部の生徒からは絶大な人気を誇っていて、友達が多くて、気さくで、誰にでも優しい。
「──だから、気にすることないのに、って?」
どこか呆れたような眼差しでそう言った里香ちゃんに、こくんと頷いた。
とある日のお昼。
阿久津くんに言われたことと、私がそれに対して思ったことを相談してみると、返ってきたのは想像と違う反応だった。
「私も丁度言おうと思ってたんだよ。あんまり鈴原との距離、間違えないようにねって。七葉、男慣れしてるわけじゃないしさ」
「距離……」
ずっと考えていた、阿久津くんの言葉の意味を。
あんまり、鈴原と仲良くしないで。阿久津くんはそう言った。でも、阿久津くんが心配するようなことは、もちろん無い。
私があんまり納得してなさそうな顔をしていることに気づいたのか、里香ちゃんは眉を下げて苦笑した。

