「はは、ゆづかは病気でも元気がいいな」

笑ったカウルの顔が近づいてくる。
こつんとおでこをあわせると、そのあとに唇をパクッと覆った。カウルは食べ物でも食べるように二、三回唇を合わせるとすっと離れた。

「?!」

わたしはボンっと顔が噴火した。


「唇がカサカサだな。いい香油があるから塗ってやろう」

小さな瓶からワセリンのようなものを指で取り出すと、唇にちょんちょんと塗ってくれる。


「ん? 顔が赤い。熱が上がったか?」

カウルは、何も気にしていなそうに首を傾げた。


「いいいい、いま、きききききキス……」

「ノーティ・ワンには呼気から病を吸い出すという治療法がある。相手に病をうつしてしまうという難点があるが、ゆづかが伏せっているのは気が気じゃないからな。俺なら丈夫だから、安心してうつしてくれ。
それにしても、昨夜から何度か行っているおかげで回復が早いな。もう何度かしておこう」

せっかく香油を塗ったのに、またパクッと吸われる。
チュッとリップ音がなり、わたしは体を震わせた。


「ゆづか、何が食べたいんだ? なんでも持ってきてやるからな。今日は我が儘を言っていいんだぞ」

カウルはわたしの肩を抱き、気遣わしげに撫でてくれる。

それってあれですね? 元の世界にもあった、カップルにありがちなキスで風邪をうつして、自分は治るっていうあれですね?


ああ、わたしのファーストキス、寝ている間に終了……